遺産相続放棄(3)

相続財産に借金がある場合、滞納していた税金がある場合、亡くなった方が連帯保証人になっていた場合など、「相続放棄」をして相続財産を受け継がないことを選べます。

相続放棄をする場合は、裁判所に相続放棄の申立てをします。その後、裁判所で相続放棄を認めるかどうかの審査をします。例えば、相続財産のうち預貯金や現金を隠して相続放棄を申し立てた場合は、他の権利者や、借金の貸主の権利を害することになるため、相続放棄は却下されます。同様に、預貯金や現金を使ってしまった場合も、他の権利者の権利を侵害することになるため、相続放棄は認められません。

しかしながらいくつかのケースでは、相続財産を使った場合であっても、相続放棄が認められる場合があります。例えば、相続財産の中から葬儀費用などのお金を使った場合は、社会通念上当然に支払われる支出のため、相続財産を相続人のために使ったことには当たらず、相続放棄が認められます。同様に、亡くなった方が支払うべきだった電気代や水道代などの公共料金、家賃、入院費などを支払った場合であっても、相続放棄は認められます。

では、生命保険金を受け取る場合は相続放棄ができるでしょうか。生命保険金は、受取人の指定があって特定の方に支払われる場合は、相続財産になりません。つまり相続放棄をしても生命保険金を受け取ることができます。ただし、受取人の指定がない場合や、受取人が亡くなった方本人になっている場合は、相続財産に組み込まれることになるため、生命保険金は受け取ることができません。

また、亡くなった方の銀行預金を解約した場合であっても、解約した現金を使ってなければ相続放棄はできます。その他、財産価値のない物を形見分けとして他人に譲った場合であっても、相続放棄が認められることがあります。このあたりは専門家に確認して、相続放棄手続きを進めた方がよいでしょう。

なお、相続放棄をした場合、次の順位の相続人に相続をする権利が移動します。そのため、借金があるために相続放棄をするときは、家族・親族などの相続人全員が相続放棄をした方がよいことがあります。この全員が相続放棄をする場合について、次回お話ししたいと思います。

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